アジア大会、国際大会・交流を見て感じたこと 木村レポートNo.1

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kimura3.jpg木村興治
2002年11月23日

アジア大会では、女子団体で北朝鮮が、報道されていた通りの母国の若い女性30人余りの統制の取れた応援(隔離された2階の一角で)のもと、中国を劇的に破り優勝した。
北朝鮮の選手達の顔ぶれは、ここ10年ほど全く変わっていない。現在、全員25~26才のはず。ペンであれシェークであれ、 一面につぶ高ラバーを貼っており、相手選手の返球を止めたり、変化をつけ、撹乱して有利な展開を狙う守攻型である。93年以降、世界大会でいずれも中国に敗れたものの、4回2位(昨年の大阪も)になっている。

しかし、最近のつぶ高ラバーのルール変更に伴う変化の減少、選手のつぶ高への慣れと対応力の向上により、彼らの戦術には苦しさが生じていた(と小生は感じていた )。8月の平壌国際大会では、世界ランクではずっと下位の中国や日本の若手選手に数人が負けた。そのとき私は北朝鮮の役員に率直に述べた。つぶ高での止めの回数を減少させ、相手の低い返球でも、苦しいコースでもフォアハンドでの攻撃を行うべきではないか 、と。 北朝鮮の監督は基本的に365日選手と行動を共にしているが、8月の経験を選手、監督がいっしょになって総括し、今大会の決勝に臨んだと思われる。

一方、中国の選手・コーチには明らかに、負けるはずがない、というおごりがあった。試合の直前まで選手席に着席し、そのイスの後ろで座ってストレッチ体操をし、そしてコートに出ていく 、という通常の大きな試合前の準備とは異なる対応だった。


今回のアジア大会は、 韓国の長期的選手育成の成果を見る(見せつけられる)大会でもあった。男女とも複で金メダル(男子は2位も)、男子団体・混合複で2位、男女単・女子複で3位。
筆頭は、20歳のペン・裏・ドライブの選手。 団体決勝では中国の孔令輝に破れたものの、フットワークを駆使したフォアハンドドライブ・スマッシュで一歩も引けを取らな かった。抜けたと思われるボールを空中に両足を浮かせて飛びつくという場面が数回あり、私を含め見ていた専門家集団をうならせた。その鍛えられた足腰・フットワークが複の優勝、混合の2位をもたらした(単出場は一協会2名のため、 彼のような若い選手は出番なし)。 彼が、アジアの伝統と歴史であるペンホルダーの選手であるのも嬉しい。韓国の指導者に話しを聞いてみると、色々なタイプの選手を意識的に育成しているとのことであった。また、フットワークの練習を重視している 、ということも聞いたが、試合を見ればなるほど、とうなずけることであった。


11月下旬に千葉で日本・韓国ジュニア選手(高1以下)の合同合宿・試合があった。日本の選手は女子に1名、ペン攻撃型がいるだけで、後は全員シェーク攻撃型。韓国は男子にペン・ドライブ2名女子にはカット主戦、ペン・表攻撃型あり 、といった構成で日本との違いを見た 。

日本の若い選手育成と発見に更なる示唆を感じさせる2ヶ月であった。


文中の写真は『卓球レポート』よりご提供いただきました。(本文の無断転載、引用を禁じます)