アジア選手権舞台裏  木村レポートNo.3

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kimura3.jpg木村興治
2003年3月19日

2月22日から28日まで、タイ バンコクで第16回アジア卓球選手権大会が開催された。久しぶりに大きな旅行バックを一杯にして出発した。アジアではご既承の通り、各国の国(協会)力、卓球力の違いが大きいことから、責任母体であるアジア卓球連合や大会組織委員会は選手権大会といえども、「友好というか、配慮する精神」を持って臨まなければならない。まずは、その辺から。

エントリーの締め切りは1月22日であった。しかし、卓球強国北朝鮮からのエントリーがない、ということなので、一週間締め切りを延期して働きかけを強めた。そして1月28日の団体戦ドローでは男女にエントリーされた。しかしながら、大会前日の2月21日の選手変更等重要事項を判断するジュリーミーティングでは、北朝鮮の選手の不参加が確認され、団体戦組み合わせの調整を行うこととなった。
22日朝から団体戦が始まったが、男女で4チームが時間となってもコート内に現れず、棄権(不参加)となった。予選リーグで2チームしかないグループでも棄権があり、試合をせずに決勝第2ステージに進むチームもあった。

次は、「勝つことを目指す選手権」として起こったこと。女子団体準々決勝 韓国対香港の試合は23日11時であった。小生は9時から会議で、体育館に入ったのは16時頃。両者の試合は行われておらず、ジュリーミーティングが開かれていた。理由を聴くと、提出された香港のオーダーに参加資格のない選手がいる、と韓国から抗議があったからだという。協会を代表して国際大会に出場経験のある選手が、他の協会に移動した場合、3年間移動先の協会代表として、世界、オリンピック、大陸大会に出場できないという規則がある(プロツアー等のオープン大会は出場OK)。昨年9月のアジア大会(韓国)でも中国から香港に移動した選手がこの規則に違反し、大会参加不可となっている。同じケースで中国→香港への選手であった。色々あったが、ジュリーは資格なしと決定。両協会もこの決定を受け入れた。これで良かったが、もう一幕あった。試合の実施は大会ディレクターと審判長の役割。私は意見があったが、出る幕ではないのでじっとしていた。ディレクターの決定は香港チームに資格のない選手の代わりを入れたオーダーを提出させ、試合を開始することであった。香港はその通りにした。韓国チームは受け入れられないとして、試合時間になってもコートに入らず棄権した。みなさんはどう思いますか? 
私の考えは、団体戦で監督が署名をして提出したオーダーは不変であり、たとえミスに気がついても再提出はできないものである。この場合、当初のオーダー通りに試合をし、香港チームの参加資格なしの選手のポイントを韓国に与えるか、規則に違反した選手が入ったオーダーは無効として、この試合を負けとするかである。
私は、アジア卓球連合の責任者(李富栄会長は未着)として、またニュートラルの立場でジュリーの責任者、韓国・香港の協会代表、大会ディレクターから事情を聞いた。香港に謝罪の意図はなく、大会関係者も一件落着としている。

さて、韓国女子選手は個人戦に向けた練習もせず、このままだと女子はすべてを棄権することになる、と役員が言っている。韓国の立場・心情を充分理解できる私としては、韓国側と話し、個人戦開始前夜到着の李会長と面談。ある提案をした。しかしながら、朝9時から試合がある韓国女子選手が8時30分になっても食堂にいる。となりで役員が話し合いをしている。8時45分、役員から私に、選手は参加する、今すぐ出発する旨の通知があった。すぐに地元役員の携帯電話から審判長を呼び出してもらい、事情を説明。試合時間には遅れるが、棄権通知をするな、と話した。精神的に落込み、練習にも集中できなかった韓国女子選手たちの個人戦の結果は、ダブルス3位だけであった。

最後に、複雑と見えた単純な忘却の話。
日本が2位となった女子ダブルス表彰式。3位の韓国が現れなかった。意図的な不出席ではないか、と多くの人が思った。私は、その夜、韓国団長と会い、試合と表彰式参加はセットのものであるとし、韓国の不参加に対して遺憾の意を示した。団長の説明によると、日本に準決勝で負け、頭の中が真っ白になり、また、8時半になっていたので外での夕食を考えたため、スケジュールにあった表彰式を忘れた、というものであった。私は、それならば、明朝大会責任者(タイ卓球会長)に事情を説明し、謝罪すべきであることを述べた。韓国団長はそれを行った。

さて、旅行バックの中身は主として、早稲田の選手が協力して残してくれていた使用済みラバーであった。北朝鮮は役員2人だけが来ていた。部屋で話した後、これらのラバーをすべて手渡した。大変喜んでくれた。

以上

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